意思表示と第三者
前回は意思表示の各類型の基本、
表意者と相手との関係を勉強しました。
今回は第三者が現れた折を
勉強します。
第三者の関わり方
第三者の関わり方は、
大きくふたつです。
ひとつめが第三者に影響されて
意思表示した場合。
詐欺や強迫でこの事例が出題されます。
「部外者に騙されたり
脅されたらどうなりますか?」
ってね。
もうひとつが
意思表示の後から第三者が現れた場合。
これは意思表示全般で出題されます。
「無効や取り消しになるんだったら
第三者はどうなりますか?」
って出題ですね。
第三者に影響されたら
まず第三者に騙されたり
脅されて意思表示したらどうなるか?
この場合、
騙されたり脅された表意者も可哀想ですが、
相手は直接何もしてないんですね。
ですから相手は
「私は何もしてないのに…」
と思ってるんです。
この場合、
表意者の取り消しを認めて相手に泣いてもらうか、
表意者の取り消しのを認めず相手の利益を守るか、
この判決を下すのが我々の勉強です。
結論は詐欺と強迫で
異なってて、
強迫は常に取り消し可能。
詐欺は相手が悪意又は有過失なら取り消し可能。
つまり、相手が
「こいつ部外者に騙されてるな」
って知ってた、
或いはうっかりで知らなかった
場合は取り消し可能です。
逆に、相手が、
表意者が騙されてる事に善意無過失なら
表意者は取り消せません。
この違いですが、
強迫は表意者が弱かっただけなので、
相手を犠牲にしても
表意者を守ります。
対して詐欺の場合、民法は
「騙される人は欲深い」
って考えるんです。
ですから相手の状況次第では
詐欺被害者たる表意者に
ある程度冷たくします。
「騙される人は欲深い」って、
詐欺被害者にある程度冷たくする民法の考えは、
今後も出てきますから理解して下さい。
悪いのは第三者なのに…
ここで疑問になる人もいるでしょう。
「悪いのは騙したり脅したりした
第三者じゃないか」と。
詐欺られた表意者や、
取り消されたら相手は、
不法行為に基づく損害賠償
とかで責任追及します。
単元が異なるので
今回は解説しませんが、
諸悪の根源に責任追及する手段はありますから、
そこはご安心下さい。
意思表示の後の第三者
瑕疵ある意思表示によって法律行為をしてしまった後で
第三者が現れた場合です。
例えば転売されてしまったとか。
こうなってしまった折に、
表意者と第三者のどっちを守りますか?
という判決です。
今からそれぞれ解説しますが、
「表意者の帰責性との相関で決する」
という判例理論があります。
平たくいうと、
「意思表示した人の落ち度具合で
勝ち負けは変わります」
という理論です。
まずこれを理解して、
以下を勉強下さい。
強迫
相手から強迫された場合です。
単に表意者が弱いだけで、
民法上表意者に落ち度が全くありません。
民法は、弱い人はとことん守ります。
ですから、強迫されたなら、
表意者はどんな第三者にも対抗できます。
たとえ第三者が強迫されてたのを善意無過失、
知らなかったとしても。
「対抗できる」というのは、
法的な権利を主張できるという意味で、
物やお金を取り返せたり
とかです。
詐欺、錯誤
ここでいう詐欺とは、
相手から詐欺られています。
民法は詐欺られた人を欲深いと
考えるんでしたね。
錯誤は勘違いですが、
表意者のうっかりですね。
どっちも表意者に多少の落ち度があります。
そうすると、第三者にどれぐらいの
落ち度があるかで決まります。
そこで、第三者が詐欺や錯誤で意思表示してしまったのにつき善意無過失であれば、
表意者は第三者に対抗できません。
落ち度のない第三者を
守ってあげなきゃいけません。
逆に第三者が悪意有過失なら、
表意者は第三者に対抗できます。
わかってたりうっかりした第三者まで
守る必要ないですから。
心裡留保、虚偽表示
これらは、
表意者が積極的に嘘ついてます。
相手が嘘に加担してるかしてないかで
異なりますが、
表意者と第三者の争いですから。
この場合、第三者が善意でありさえすれば
表意者は対抗できません。
第三者に過失があっても
第三者は守られます。
嘘つく表意者が悪いですから。
流石に第三者が
「表意者は嘘ついてる」って
知ってたなら守られませんよ。
そんなやべー人には関わっちゃいけません。
公序良俗
「表意者の帰責性との相関で決する」
のだけでいえば、
控除に反する意思表示する表意者は
最悪です。
ですから
「そんな悪い表意者は
権利を失ってもしゃあない」
という考えもあります。
ですが民法では、
公序良俗は絶対無効です。
絶対無効とは、
第三者保護がない、という意味です。
どんなに善意無過失な第三者へも、
表意者は対抗できます。
幾ら第三者を守るといえ、
殺人契約みたいなやべー契約を、
一部だけでも有効にできないかって
発想自体、正義に反します。
公序良俗は、当事者の公平ではなく、
社会正義の実現という、
他とは異なる趣旨があるのを理解下さい。
落ち度、公平の考慮
多くの参考書では、この辺りは
「善意無過失なら取り消し可能」
みたいに、
結論と表ぐらいしか書いてないでしょう。
だけど民法って、
知識丸暗記じゃ解けないんですよね。
一見場当たり的ですが、
民法 ‘思考’ っていう ‘公式’ があって、
各事例が公式に照らし合わせてどうか?
って基準を基に ‘計算’ してるんです。
この思考回路をぜひ鍛えてほしいでしす。
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